シャーロック・ホームズは長い間、低倍率の顕微鏡を覗きこんでいたが、
やっと体を起すと得意そうにこちらを振り返って言った。

 

「いまからパディントン駅へゆけば、ちょうど汽車の時間にいいだろう。詳しいことは途中で話すとして、
 すまないが君のあの上等の双眼鏡をもっていってくれたまえ。」

 
「それは好都合です。ワトスン君も私も釣りのほうじゃ有名なのです―― そうだねワトスン君?」

 

 

「それはそうと、こんなひどい嵐の中を、わざわざやって来たところをみると、よほど重大な用事なんだろうな。」

「そういえば サー・ロバートは、今度のダービー競馬に持ち馬を登録しているそうだね?」

 

 

 

顕微鏡 KRAUSS BAUSCH&LOMB社製 19世紀
薬瓶各種 19~20世紀イギリス
蝶の標本 19世紀イギリス
 
   

「どうやらワトスン、行かなくてはならないようだ。」
「行くって!どこへ?」
「ダートムア。キングズ・パイランドへだよ。」